試験研究の成果

【食料生産地域再生のための先端技術展開事業】
大麦リビングマルチを利用したキャベツ等のIPM体系

分  野
野菜
品  目
キャベツ,タマネギ
技術概要
 露地園芸では化学合成農薬の代替手段が不足しており,IPMの普及はあまり進んでいません。また,近年では農薬の効果が低下した病原菌(耐性菌)や害虫(抵抗性害虫)が顕在化してきています。
 そこで,露地園芸品目における総合的病害虫管理技術(IPM)の普及,拡大を目指し,リビングマルチを導入したIPM体系を確立しました。

キャベツ
 IPM体系(夏どりキャベツ)
 大麦によるリビングマルチを利用した夏どりキャベツのIPM体系は図1のとおりです。

図1 リビングマルチを利用した夏どりキャベツのIPM体系
 IPM体系(冬どりキャベツ)
 大麦によるリビングマルチを利用した冬どりキャベツのIPM体系は図2のとおりです。

図2 リビングマルチを利用した冬どりキャベツのIPM体系
 大麦の害虫抑制効果と刈込み時期の目安
 大麦をリビングマルチとして利用することで,モンシロチョウ,ヤガ類(ウワバ類,オオタバコガ),微小害虫(アブラムシ類,ネギアザミウマ)のキャベツへの寄生を概ね1/3~1/2程度に抑制することができます。
 コナガに対しては抑制効果が劣るため,特にコナガの発生が多い圃場では,交信攪乱剤及びBT剤を併用してください。
 また,大麦の生育初期には害虫抑制効果が劣るため,定稙苗の殺虫剤灌注処理と併用してください。
 大麦をリビングマルチとして取り入れた場合には,キャベツへの日射量が抑制されて収穫物が小玉化する場合がありますが,これは大麦の草高がキャベツ草高(畝高含む)を超えないように,大麦を刈り込むことによって回避することができます。
 大麦を刈り込んだ場合でも害虫抑制効果は,刈り込まない場合と同程度認められます。

タマネギ
 IPM体系(春まきタマネギ)
 大麦によるリビングマルチを利用したIPM体系は図1のとおりです。
 リビングマルチは大麦「てまいらず」を通路部分10aに対し10kgの割合で播種し,生育させることによりネギアザミウマの寄生が抑制されます。
 大麦を刈り込んだ場合にも抑制効果は示されます。

図1 リビングマルチを利用した春まきタマネギのIPM体系
 大麦の刈込み時期の目安
 大麦の草高がタマネギの草高の半分程度に達した時点で,畝の高さまで刈り込むことによってタマネギの小玉化は回避することができます。
 大麦利用体系での殺虫剤散布時期
 大麦利用体系ではネギアザミウマの発生初期(5月下旬頃)のプロチオホス乳剤(商品名:トクチオン乳剤)散布が高い効果を示します。
 その後は,発生状況により本虫に高い効果を示す殺虫剤を散布してください。
 殺虫剤の選定には,「アザミウマ類に対する各種薬剤の感受性」も参考にしてください。
関連情報
担当部署
農業・園芸総合研究所 園芸環境部(電話:022-383-8133)

 宮城県農業・園芸総合研究所
  (企画調整部 企画調整チーム)
  〒981-1243 宮城県名取市高舘川上字東金剛寺1
  TEL:022-383-8118
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